三重県医師会
日本の医療制度が崩壊する?!(平成14年作成)

日本の医療制度が崩壊する?!
医者イラスト 今、政府の誤った医療行政によって、日本の医療制度は危機的な状況にあります。
 これはわたしたち医師ばかりではなく、すべての人々にとって、とても大切な問題です。
 今日は医療の主役である皆さんに、世界の医療制度と比較しながら、日本医療の現状についてお話ししたいと思います。

(1)日本医療の現状(2)世界の医療費と比較して(3)誤った将来予測
(4)病院経営の悪化(5)病院経営が悪化している理由(6)おわりに
まずは日本医療の現状について、正しくご理解ください
日本の医療は、世界でもトップレベル
 WHO(世界保健機構)が認めています。日本は世界で最高の医療を行っています。
健康寿命も世界一
 国民皆保険制度によって、国民みんなが保険に入っているので、とても安い値段で、気軽に受診することができます。
 そのために病気の早期発見・早期治療が可能になります。
 日本は健康寿命(平均してどの年齢まで健康で暮らせるか)も世界一なのです。
日本の医療費は、国際的にはこんなに低い
 日本の国民医療費は約30兆円で、税金(国庫・地方)+国民(保険料・患者負担)+事業主(保険料)で成り立っています。
 これは、一般によく言われるように「高い」のでしょうか?
 国際的にみると、日本の医療費はとても低く、一人あたりに換算すると第7位、国民所得との比率では第19位となっています。
国民医療費の国際比較(図)
医者イラスト ところが今、
このすばらしい日本の医療が、
国の経済(財政再建)最優先政策によって、
おびやかされています。

世界の医療費と比較して
国庫負担の減額
 お年寄りの割合が増え、医学も日々進歩しているので、国民医療費は自然に高くなるはずです。
 しかし国庫からの負担は減り、かわりに家計や地方自治体からの負担が増えています。
国民医療費の負担の推移
低い社会保障費
 この10年間で、先進国では日本だけが、社会保障費を減額しています。 (イギリスのブレア首相は、この数年間でイギリスの医療費を1.5倍に増やすことを公約しています)
社会保障給付費の国際比較(対国民所得)(1993年)
「社会保障費」よりも「公共事業費」のほうが多い
 国庫から支出される社会保障費と公共事業費を国内総生産で割った値では、日本だけが「社会保障費」よりも、「公共事業費」のほうが多くなっています。(イギリス:9倍、ドイツ:7倍 フランス:3倍、アメリカでも2.5倍)
社会保障費と公共事業費の対国内総生産(1997年)
医者イラスト 政府は国民の健康よりも、
公共事業や銀行救済のほうが大切なのでしょうか。

 自分や、自分の家族が病気になれば、とにかく病院に連れていくはずです。
 誰でも病気になるし、ケガもします。そんなときは、やはり最高の医療を受けたいと願うのが当然ではないでしょうか。
 お金のことよりも、まずは国民の健康が優先されるべきです。
 国の経済(財政再建)最優先政策によって、一番損をするのは結局国民なのです。

誤った将来予測
国民医療費の間違った予測値
 政府は医療費の高騰を予測し、抑制策を強めましたが、平成12年は38兆円の予測に対して、実際には29.1兆円にとどまっています。この、誤った予測値は修正されていません。
国民医療費の推移
30年後の人的負担率は、1.31倍にしかならない
 1人の老人を支えるために必要な人数が、1994年の4.5人が2024年には2人になるという計算があります。しかし、これは数字のトリックです。
 実際の負担率は年齢を区切った数値でも、右の図のように1994年の1.31倍程度にすぎないのです。
30年後の人的負担率
1人の労働者が、自分を含めて約2人を扶養しているという状況は、100年間ほぼ変わらない。
 日本の総人口を実際に労働している労働人口で割った数です。元気な高齢者(65才以上)や女性の社会進出によって、人的負担はそれほど変化しません。
1人の労働者が支える扶養人数
病院経営の悪化
医者イラスト  公的病院をみてみても、経営は赤字です。
 私立の病院も、ここ数年赤字になっているところが多いようですね。
 一般の診療所でも、やはり収益は小さくなっています。
 医療費が上がると病院が儲かるということではありません。

病院経営が悪化している理由
薬の値段が高い
 特に発売後10年以内の、いわゆる「新薬」の値段が極端に高くなっています。
 新薬の値段を決めるのは厚生労働省ですので、製薬会社に有利な政策をしているといえます。
 日本製の同じ薬が、欧米では安く売られ、日本では高く売られていることもあります。
薬価の国際比較
医療機器が高い
 同じ医療機器の値段が他の国に比べて、場合によっては何倍も違います。
 韓国では欧米と同じような値段で売られているので、輸入品だから高いというわけではなく日本だけの現象です。
 実際の原因は、値段の約64%をしめている高い流通マージンにあるのです。
医療機器の値段
低い技術料
 日本の医師の技術料は、アメリカの医師の約2割程度です。
 今回の医療改定で診療報酬を削減され、医師の技術料はさらに低くなりました。
日米の技術料の比較
看護師イラスト また日本では、国民皆保険制度により誰もが病院で診療を受けることができるため、欧米に比べ、外来・入院ともに倍以上の患者さんがいます。(アメリカとの比較では1病床あたり1/10)。
 医師や看護師は、安い単価で毎日忙しく働いていますが、患者さんに対する医療意従事者の数が少なく、何時間も待ってもらって、数分の診察時間しか取れないことも多くあります。
 現在の医療は、医療機関・病院従事者ばかりではなく、患者さんの犠牲の上にも成り立っているのです。

おわりに
医者イラスト  患者さんの負担だけを増やすことによって補おうする医療改革。病院経営の悪化や経済的な破綻。このままでは確実に、日本医療の崩壊につながります。
 わたしたちは、いろいろな議論や、検討を続けながら、未来のあるべき姿を模索していく必要があります。
 三重県医師会は、県民に安くてよりよい医療を提供できるよう、みなさま同じ視点でこの問題を共に考えていきたいと考えています。

▲topへ

※鈴木 厚「日本の医療危機」日本醫事新報第4075号?第4077号より

ホームへ