過労死等防止対策白書(三重医報 第697号掲載)

 本年10月30日に政府は「過労死等防止対策白書」を発表しました。
 この白書は、近年、我が国で多発している過労死等を防止するために平成26年に制定・施行された「過労死等防止対策推進法」に基づき平成28年に第一回の発表がされてから今回で3回目になります。
過労死等とは業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害」と法的に定義されていて、死亡に至らない疾患も含まれます。
 白書によれば、過重な就労による「脳・心臓疾患」の労災補償は2007年をピークに減少したものの昨年全国で293人(死亡92人)が認定されており、過重労働と共に業務の心的な高い負荷も関係する「精神障害」は、年間の認定が「脳・心臓疾患」を上回ることとなった2010年以降年々増加し、昨年は全国で506人(自殺者98人)に著しく増加しています。
 この内、医療の分野の昨年の労災補償認定は「医師が25人脳・心臓疾患17人、精神障害8人)、「看護職が53人脳・心臓疾患1人、精神障害52人)と全産業・職種の中で「教職員」「自動車運転従事者」と並んでリスクが高い状況が見られ、本年見直しが行われた「過労死防止対策大綱」(閣議決定)では旧大綱に続いて防止対策推進の重点業種とされています。
 過労死等の防止には、長時間労働の削減(時間外労働短縮・労働時間適正管理)、過重労働での健康障害防止対策(産業医面接指導等の確実な実施)、メンタルヘルス対策(相談体制・多様な働き方設定)、ハラスメント防止対策(管理者教育・相談体制)等の取組を計画的に継続して推進することが求められます。
 我が国の長期的な人口・労働力減少が進む中で、医療の職場の厳しい勤務環境改善を進めなければ医師・看護師を始めとする医療従事を志す人材確保に今以上の支障を来すことになるのではないでしょうか。
 又、育児・介護等の事情で職場を離れている医療業務資格者の方々の職場復帰を容易にするためにも“ワーク・ライフ・バランスWLBに配慮した多様な働き方の導入”“働きやすい医療勤務環境作り”を推進していただきますようお願いいたします。

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