副業・兼業の促進1(三重医報 第720号掲載)

「副業・兼業の促進」について

 労働者が労働契約を締結するとき、労働条件として定めた業務に従事する以外の時間は“自分時間”として自由に過ごすことができるのですから、その時間に“他の仕事に就労”することも規制されるものではなく、厚労省は平成30年に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発出していますが、働き方改革が進む中で、本年9月1日に、副業・兼業従事者の保護・普及促進を図る観点を明確にする方向でガイドラインを改訂しました。

 この労働契約の原則は医療の業務でも同様であり、就業規則等で「職員が許可なく当院以外で勤務することを禁じる」と規定していたとしても、合理的理由がなければ法的に無効となり、所定勤務時間の外での他の医療機関等への就労を認めなければなりませんので、規定が「副業・兼業を認める」趣旨になっているかを点検いただきたいと思います。

 但し、企業としては、副業による長時間労働の結果での労働者の健康被害による労務提供への支障等も考えられますので、判例で例外として認められた理由(就労上の支障等)があるときの副業・兼業の禁止・制限届出制も付記して、合理的な制限を行う際に労使トラブルが起きない備えをしてください。

 なお、副業・兼業の場合の労働時間は、事業主を異にする場合も、労働時間に関する規定の適用は通算する(労基法38条1項)」とされていることも改訂ガイドラインは追認しており、例えば、1日6時間のパート勤務者に他の医療機関での1日2時間のパート勤務を認めている場合、双方で勤務がある日に2時間の残業をさせたときは、副業の勤務がなければ「1日の法定労働時間の範囲内の所定外勤務」となりますが、双方での勤務があれば通算した所定勤務時間8時間(6+2時間)を超える2時間の残業なので法定労働時間を超える時間外勤務」として割増賃金支払いが必要となることに留意してください。

 医師の副業・兼業では、大学病院等の勤務医が県内医療機関の「外来診療」「病棟当直・日直等に従事しておられる例があると思いますが、大学病院等で法定労働時間勤務(1日8時間、1週40時間)であれば、受入れ医療機関の勤務は全て時間外労働になりますから割増賃金支払いが必要であり、この場合、労基法改正による「医師の例外時間外労働上限時間規制」が施行される2024年4月1日以降は、受入れ先医療機関では年間960時間を超える勤務はできなく(B水準指定も規制される状況)なります。

 以上は、改訂ガイドラインの一部の説明ですが、副業・兼業が奨励される時代で、医療従事者の労務管理にも留意が必要な事項が多くありますので、インターネット情報等を収集のうえ、不明事項はセンターへのお問い合わせをいただきますようお待ちしております。

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