新型コロナワクチン接種業務従事の労務管理(三重医報 第735号掲載)

新型コロナワクチン接種業務従事の労務管理ワンポイント

 心配された新型コロナウイルス感染症の感染再拡大に、感染予防・症状軽減のための3回目のワクチン接種実施が進められ、医療従事者の皆さまには再び過重なご負担をお願いする事態になっていますが、医療機関勤務の医師・看護師の方等がワクチン接種業務に従事される場合、労務管理として以下のことにご留意ください。

 ワクチン接種は、「医療機関で個別接種大規模会場で集団接種」に分かれますが、自治体から委託を受けて医療機関で個別接種を実施する場合、当該医療機関での業務従事になることは言うまでもありませんが、法定労働時間外・法定休日に実施すれば時間外・休日労働として割増賃金支払いが必要になります。
 なお、医療機関では通常業務での時間外・休日労働がなく「時間外・休日労働労使協定(36協定)」を締結していない場合は、労働基準法第33条の規定(災害的理由での時間外・休日労働は申請・届出許可で可→新型コロナ関係業務は該当)により所轄労働基準監督署長の許可(事前に申請書!)が必要です。
 36協定の限度時間を超える時間外・休日労働となるときも、同様に許可申請、又は届出が必要です。
 
 大規模会場での集団接種の場合は、「A 自治体から医療機関が医師・看護師等の派遣要請を受けて、職員を派遣」と、「B 自治体の募集に医師個人が応じて、勤務先医療機関が兼業を許可」する2つの形態が考えられます。
 Aの場合は、新型コロナ禍の特例で認められた「派遣就労」なので、職員を派遣した医療機関の業務従事として、院内勤務と合算した労働時間管理(必要な場合の時間外・休日労働取扱い等、①と同じ)が必要です。
 なお、集団接種では、自治体からの費用支払いが派遣元医療機関にまとめて支払われますが、その金額が当該ワクチン接種に従事した職員の業務従事時間(時間外又は休日労働時間)に対して支払うべき賃金額に不足するときは、追加して支払いが必要であることにご注意ください。
 Bの場合は、ワクチン接種会場においての業務は医療機関での勤務ではなく、職員と自治体等との契約で、医療機関勤務の休日・時間外に兼業として就業(契約形態によって請負・労働)することになり、医療機関には労働関係としての使用者責任自治体が雇用契約の場合、通算労働時間管理は必要は生じません
 Bの場合、自治体との雇用契約で兼業勤務をした医療機関の職員が、当該医療機関において労災休業(補償)給付を受ける事情が発生(ワクチン接種業務従事後、賃金算定期間3か月以内)したときは、自治体からの支給賃金も給付基礎日額算定基礎に合算されることにもご留意ください。
 
 政府から日本医師会等を通じての「ワクチン接種に関する医療機関への協力要請」にお答えいただくことには心から感謝申し上げますが、医療従事者の勤務が、過労死レベルの長時間労働・休日なき連続勤務とならないよう、原則としての労働条件確保にご留意いただきますようお願いいたします。

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