労働災害防止・職員の健康確保(三重医報 第736号掲載)

労働災害防止・職員の健康確保について

 三重労働局から、令和3年の労働災害発生状況速報が発表されています。
 勤務環境改善の取組は、医療従事者の皆さんが「働きたいと思う、働きやすい職場作り」を推進していただくことですが、「働きやすい職場」の第一条件は「安全」であることだと思います。

 発表は、労働安全衛生法の規定による労働者死傷病報告書の集計によるもので、報告遅延も含めての確定値発表はもう少し遅れますが、三重県下全産業の労働災害被災者(療養のための休業が4日以上必要であったもの)は年間2,367人で、平成29年からの増加に減少傾向が見えた令和2年と比較して再び増加に転じていて、医療機関を含む「保健衛生業」では、平成25年の142人被災から、令和2年301人、令和3年371人と大増加しています。
 又、あってはならない死亡災害については、1年間に三重県下で20人の発生があり、このうち「保健衛生業」を含んで3人が新型コロナウイルス感染により亡くなられています。
 災害原因としては、「転倒」がもっとも多く、続いて「墜落・転落」「無理な動作・反動」と続きますが、「保健衛生業」では「転倒(29%)」「無理な動作・反動(23%)」が突出して多く発生しています。
 感染症罹患は職業としてやむを得ないものでなく予防対策徹底を、又、転倒・不自然姿勢での災害防止には「作業手順の見直し等を工夫いただきたいと思います。

 なお、業務に起因する疾病も、使用者には労働者に対する健康確保の責任があり、こちらは令和2年の集計ですが、近年減少傾向であったものが大幅に増加し、三重県下全産業で180人の罹患(休業4日以上)があった中で、保健衛生業は79人(44%)を占め、この内、新型コロナウイルス感染症は全産業62人中の51人が発症しています。
 特殊事情を除いて、業務に起因する疾病で最も多いのは全体の約半分を占める「腰痛」で、しかも「保健衛生業」が第一位です。

 過重労働、職場でのハラスメントが関係する脳・心臓疾患、精神障害の労災補償については、全国状況を厚労省が公表しており、脳・心臓疾患(いわゆる過労死疾患)は毎年6百人台後半の認定があり、死亡者は毎年200人を超えていて、精神障害での労災補償は、年々請求件数が増加(令和元年以降2000件超)しており、毎年、請求件数の約3分の1(令和2年=608人)が業務による発症との認定を受けていて、毎年80~90人台の自殺の業務上認定があります。
精神障害では、全業種の中で医療・福祉(保健衛生業)の業務上認定が飛びぬけて多く、全体の4分の1を占めています。

 今、医療分野の勤務環境整備としては、令和6年からの「医師の時間外労働上限時間規制」に向けて、地域医療確保・医師の高度技能取得のための「やむを得ない長時間労働に対する特例適用」の準備が重要なテーマとなっていますが、医師に限らず、全ての医療従事者の「時短取組・健康確保措置対策整備」により、医療の業務における職業病ともいえる「腰痛」や、過重労働・ハラスメント関連の「脳血管・心疾患、精神障害」の防止対策(各々、指針・ガイドライン等あり)の推進にもご留意ください。

 平成27年11月号以来、誌面をお借りしてきましたが、担当者退任のため、今号をもってお知らせ記事を中断いたしますので ご了承ください。  ご愛読いただきありがとうございました。

戻る

このページの先頭へ